睡眠時無呼吸症候群

睡眠時無呼吸症候群
(SAS)とは

いびき睡眠時無呼吸症候群は眠っている間に呼吸が止まる無呼吸と呼吸の回数が減る低呼吸を繰り返す疾患です。無意識のうちに呼吸が停止または低下することにより全身の細胞が低酸素状態となります。また胸腔の圧力が低下することで心臓へ負担がかかり、低酸素状態で睡眠の質が低下します。その上、脳は覚醒状態になり睡眠中でも交感神経が優位になることで血圧が上昇します。十分に眠れないことで昼間の活動にも影響が及びます。特に運転などでは交通事故に結びつくような事態も招いてしまうほど日常生活に影響を及ぼし、生活の質の低下によって、様々な生活習慣病の発症リスクが高まります。
近年睡眠時無呼吸症候群の罹患者は増加傾向にあり、日本では200万人以上の方が罹患していると報告されています。心臓や血管へ大きな負担をかけ続け、脳血管疾患や心疾患など命に関わる疾患を発症するリスクが高くなりますが、患者様本人は気付きにくい疾患です。昼間の異常な眠気や、ご家族の方からいびきや呼吸音について指摘された時にはお気軽に当院までご相談ください。

睡眠時無呼吸症候群
の合併症

心不全

心不全は心臓が正常に働かず酸素や血液などを全身に供給できなくなる状態です。睡眠時無呼吸症候群は睡眠中に交感神経が優位になり心臓を働かせようとするため、心臓が過労状態になり、心機能に障害が起こるようになります。
心不全患者様の3~4割の方が睡眠時無呼吸症候群を合併していると報告されており、また重症の睡眠時無呼吸症候群がある場合、死亡率が2~3倍高くなることも報告されています。

心不全はこちら

不整脈

睡眠時無呼吸症候群で交感神経が優位になることや酸素低下など様々な要因によって不整脈が起こることがあります。経過観察で問題ないこともありますが、命に関わるものもあります。気になる症状がありましたら当院までご相談ください。なお、適切な治療で睡眠時の無呼吸や低呼吸が解消されることで、不整脈も改善できる場合があります。

虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)

睡眠時無呼吸症候群は心臓や血管へ負担をかけるため、狭心症・心筋梗塞といった虚血性心疾患を合併するリスクは通常の約2~3倍になると報告があります。また逆に虚血性心疾患の罹患者が睡眠時無呼吸症候群を合併するリスクが約2倍になるという報告もあります。

高血圧

血圧イメージ睡眠時に無呼吸状態になると呼吸を再開する時に身体は眠っていても脳が一時的に覚醒した状態になります。睡眠時は通常副交感神経が優位になっていますが、一時的に脳が覚醒すると、交感神経が優位となって血圧が上昇します。睡眠中にその状態が繰り返されることによって高血圧を発症しやすくなります。無呼吸のある方の高血圧発症率は通常の2~3倍とされています。また、降圧剤を使用しても血圧を目標値にコントロールできない薬剤抵抗性の高血圧も8割近くが睡眠時無呼吸症候群を合併していたことが報告されています。
睡眠時無呼吸症候群に対して適切な治療を行うことで、血圧の改善も期待できるケースが多いです。

高血圧はこちら

睡眠時無呼吸症候群
の種類

睡眠時無呼吸症候群は睡眠時に気道が閉塞して起こる閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)と、気道は確保されていても、呼吸中枢からの指令が一時的に途絶えることで起こる中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSAS)の2種類があります。ただし、睡眠時無呼吸症候群の患者様全体の85%程度をOSASが占めています。

睡眠時無呼吸症候群
の症状

睡眠時の大きないびきや無呼吸などが主な症状ですが、これらの症状を本人が自覚することはほとんどありません。
睡眠時無呼吸症候群の自覚症状は、夜間の頻尿、朝起きた時の頭痛や寝足りない感覚、昼間の異常な眠気、集中力が低下する、胃腸の不調などで、抑うつ症状が現れることもあります。また、睡眠時の口呼吸によってのどの炎症が繰り返し起こることもあります。

睡眠時無呼吸症候群
の検査

主観的な眠気を判断できるエプワース眠気尺度やご自宅で行うことのできる簡易検査、入院して受ける終夜睡眠ポリグラフ検査があります。

エプワース眠気尺度(ESSEpworthSleepinessScale)

エプワース眠気尺度は昼間の眠気について主観的に評価する目的でつくられた、世界的に使われている評価法です。質問項目は8つで、短時間で睡眠の質について信頼度の高い評価ができることが特徴で、各質問にそれぞれ0~3の4段階の数字をつけます。
この合計を計算し11点以上は何らかの睡眠障害が起こっている可能性があり、16点以上は重症の睡眠障害が疑われますので、お早目の受診が必要です。
睡眠時無呼吸症候群だけでなく過眠症やナルコレプシーなどの評価にも使われています。

  • 眠ってしまうことはない:0点
  • 時に眠ってしまう:1点
  • しばしば眠ってしまう:2点
  • だいたいいつも眠ってしまう:3点
状況 点数
1.座って読書中 0 1 2 3
2.テレビを見ている時 0 1 2 3
3.人の大勢いる場所(会議・劇場など)で座っている時 0 1 2 3
4.他の人の運転する車に休憩なしで1時間以上乗っている時 0 1 2 3
5.午後に横になって休憩をとっている時 0 1 2 3
6.座って会話している時 0 1 2 3
7.飲酒をせずに昼食後静かに座っている時 0 1 2 3
8.自分で車を運転中に渋滞や信号で数分間、止まっている時 0 1 2 3

簡易検査

問診やESSの結果、睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合は当院から検査装置を貸し出しますので、ご自宅で睡眠時に装置を取り付けて検査を行っていただきます。簡易検査では鼻と指先にセンサーをつけて睡眠時の呼吸、酸素濃度などを記録します。
検査終了後は装置をご返却いただき、記録されたデータを当院にて解析します。
睡眠1時間あたりの無呼吸および低呼吸の回数を平均したAHI(Apnea Hypopnea Index)を算出して睡眠時無呼吸の有無と重症度が判定できます。
AHIは0~5が正常、6~20が軽症、21~30が中等症、31~50が重症、51以上を最重症とします。

終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)

詳細な検査が必要な方には入院して行う終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)を受けていただく場合もあります。
PSGでは簡易検査の項目のほかに、脳波、心電図、眼球運動、体温、炭酸ガス濃度なども記録でき詳細な状態を確認することができます。

睡眠時無呼吸症候群
の治療

CPAP療法

CPAP閉塞性睡眠時無呼吸症候群の治療で主流となっている方法です。睡眠時に専用のプラスチック製マスクをつけていただき、CPAP装置から送りだされる空気で持続的に陽圧をかけることで気道が開いたまま保たれ、無呼吸や低呼吸が起こることを防ぎ安定した呼吸を確保します。無呼吸や低呼吸が起こらなくなることで辛い症状を緩和し、それに伴い高血圧や糖尿病などの合併症の改善、脳血管障害や虚血性心疾患などの疾患を発症するリスクも低下します。装置は医療機関からのレンタルとなり、当院でもお貸し出ししております。

CPAP療法の流れ

CPAP療法は簡易検査でAHIが40以上、PSGで20以上の場合は健康保険適用で受けることができます。

問診

まずは問診とESSで睡眠時無呼吸症候群の疑いがあるかを調べます。

簡易検査

問診やESSの結果、睡眠時無呼吸症候群の疑いがある場合、簡易検査装置を貸し出しますので、ご自宅で睡眠時に装置をつけて検査を実施していただきます。

再受診

再診時に装置をご返却いただきます。装置に記録されたデータを医師が解析し、1時間あたりの無呼吸・低呼吸の平均値であるAHI(無呼吸低呼吸指数)を算出します。
AHIが20以下の場合は、CPAP以外の治療法を検討します。
AHIが21~39の場合は、入院して行う終夜睡眠ポリグラフ検査を受けていただき、その結果が20以上であれば健康保険適用でCPAP治療を受けていただくことができます。
簡易検査でAHIが40以上の場合も健康保険適用でCPAP治療の適応となります。

CPAP以外の治療

生活習慣改善

肥満や内蔵脂肪型肥満は無呼吸を起こすリスクを高めますので、食事や運動などで減量を行いましょう。また飲酒は睡眠時に筋肉を弛緩させるため、無呼吸が起こりやすくなります。毎日の飲酒は控え、飲酒時も適量を守ってください。
睡眠時は仰向けに寝ると気道が狭くなりやすいため、横向きの姿勢で眠ることがおすすめです。

外科的治療

外科手術に至るケースはあまりありませんが、骨格的な問題や口蓋垂、軟口蓋などの形状の問題で気道が塞がれている時には手術を検討することもあります。

マウスピース装着

睡眠時に舌根部がのど側に落ち込んで気道を塞いでいるようなタイプの無呼吸には、特殊なオーダーメイドマウスピースが有効な場合があります。
患者様それぞれの口の形にあわせたマウスピースを歯科医院で作成してもらう必要があります。

気になる症状がある場合は
お気軽にご相談ください

睡眠時無呼吸症候群はご自身では気付きにくい疾患です。睡眠時無呼吸症候群を発症しているのにも関わらず、受診をしていない方は全体の8割以上いるとされています。
睡眠時無呼吸症候群によって、高血圧や糖尿病などの生活習慣病の悪化や虚血性の脳疾患や心疾患など重篤な疾患を発症するリスクも高くなります。
また、夜間に十分な睡眠が得られないことで昼間に激しい眠気に襲われ、仕事や学業への影響がでるだけでなく、運転中の居眠りで人身事故を起こしてしまい、他者や家族まで巻き込んでしまうケースを報道などで見かけることもあります。
昼間の激しい眠気、朝起きた時の疲労感や頭痛といった自覚症状だけではなく、いびきを指摘された時なども一度当院までご相談ください。